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不登校と「中1ギャップ」宗像市では今年度から、市内2校区(日の里、大島)で「小中一貫教育」の調査研究を始めました。導入をめぐっては、議会で「エリート養成を目指すのか」といった質問も出たそうですが、実は、大きな理由の一つは「不登校対策」でした。
同市ではここ数年、不登校児・生徒が、中学2年生から大幅に増え、「授業についていけない」「学校が面白くない」といった理由が挙げられました。小学校から中学校にかけての「接続期」の環境変化に不適応を起こす「中1ギャップ」に陥り、そのまま回復できずに中2で不登校になってしまうケースがあるようです。
また、学習意識について児童生徒にアンケート調査を行ったところ、小学校高学年あたりから「勉強が好きではない」「授業中に発表していない」と答えた人数が増えていました。
  小学校では、子どもの関心を高め分かりやすく説明する授業を目指すのに対し、中学校では、一方的に先生が教える講義型の授業になりがちです。こうした指導法の段差を失くしスムーズに進めるようにと、小中一貫教育の導入のための調査研究に踏み切ったのでした。

小中教師が互いに行き来
  現在は、小6の理科・体育を中学の先生が、中1の数学と中1・2の家庭科を小学校の教師がそれぞれ受け持っています。中学でつまずきやすい数学の導入期に、小学校教師が教材などを工夫し、分かりやすく教えます。生徒の間に理解度の差が出てくると、2グループに分けて小中の教師がそれぞれ指導します。一方、化学式など専門的な知識が多くなる理科は、中学教師が実験などでさりげなく発展的な内容も織り交ぜ、中学での拒否反応を緩和させるよう工夫します。
  もともと小中の教師たちは、学校が隣りでも日頃はほとんど交流がありませんでしたが、現場で一緒になることで、指導法について刺激を与えあえるというわけです。さらに、児童生徒の個々の情報交換がスムーズに行えること、子どもたち自身も中学で馴染みの小学校教師とのつながりが保てることなどから、9年間を通して継続的に子どもたちをフォローしていけるのが大きなメリットだそうです。

家庭力・地域力の復活を
  宗像市の小中一貫教育の目指すところは、学校力・教師力の向上だけでなく、家庭と地域の意識改革にもあるといいます。市教委の脇田哲郎・教育政策課長は、「家庭や地域が学校とともに責任を負うという形が、確立されなければならないと思います。小学校から中学までの子どもたちを継続して見守り、十分な教育を与えるために、家庭と地域が本来持っている教育の力・見守る環境を復活させたいのです」と力を込めます。
  市では、小中一貫教育を進める学校の取り組み状況を評価したり、改善策を話し合ったりする「学校運営評議委員会」をつくり、保護者や地域住民が、学校運営に積極的に参画するシステムを導入しました。「子どもたちをみんなで育てるんだという当事者意識を持ってもらうことで、学校と家庭、地域の間の溝が埋まり、小中一貫教育の中で、時間的にも空間的にもより広がった、健全な教育環境が整っていくはずです。本当の効果があらわれるまでに時間がかかるかもしれませんが、地道に取り組んでいきたい」と話しています。

もうひとつのキーワード「不登校」
  福岡県内の市町村の不登校児童数をパーセンテージで見ると、小学生は1000人に2人に対し、中学生になると100人に2.8人という割合になっています。県では、不登校児童生徒が通う適応指導教室に大学生のヤングアドバイザーを派遣したり、平成14年から独自に「マンツーマン方式」(子どもが信頼している先生や養護教諭に家庭訪問などをしてもらう)といった取り組みをしてきましたが、なかなか減っていないのが実情です。福岡市は小中とも県平均を上回り、2ヵ所の適応指導教室(定員計60人)では足りず、来年度から新たに2ヵ所増設する方針だそうです。
  一方北九州市は、逆に小中とも県平均を若干下回り、年々減っています。市教委では「不登校児童・生徒のための自然体験キャンプや保護者対象の懇談会などを含め、できるだけきめ細かな対応を目指している」そうです。

不登校児童生徒数・割合